ビットコイン11万ドル割れとイーサ急落、市場全体の調整基調
8月25日の暗号資産市場では、ビットコインが11万ドルを割り込みました。前日比で約2.6%下落し、心理的節目を下抜けたことが投資家心理を冷やしました。イーサリアムも4,350ドル前後まで下げ、24時間で約7.4%安となりました。主要銘柄がそろって下落し、市場全体が調整局面に入った格好です。
清算拡大と需給悪化
25日の下落では、先物取引のロングポジション清算が拡大しました。清算額はおよそ7億ドル規模に達し、需給バランスを一気に悪化させました。出来高は増加しましたが、これは買いではなく売りに押された結果でした。短期的に強気に傾いていた市場が逆回転し、価格下落を加速させたことが確認できます。
株式市場との連動
米国株式市場では、S&P500やナスダックなど主要指数が下落しました。投資家のリスク回避姿勢が強まり、暗号資産市場にも波及しました。米国の金融政策に対する不透明感が続く中、リスク資産全般に売りが広がったことが背景にあります。そのため、ビットコインとイーサリアムの下落は単独要因ではなく、マクロ市場の流れとも連動していました。
ETFを巡る明暗──新規申請とSEC判断延期
新たな「アメリカ製ETF」申請
8月25日、Canary Capitalは「アメリカ製ETF」と銘打った暗号資産ETFを米証券取引委員会(SEC)に申請しました。この商品は、米国内のプロジェクトや資産に投資対象を限定する方針です。また、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)による報酬を取り込む設計を想定しており、既存ETFとの差別化を図っています。一方で、ステーブルコインやミームトークン、ペグ型資産は投資対象から除外すると説明しています。
SECによる判断延期と慎重姿勢
同日にSECは、既に申請されている複数のスポット型ETFについて判断を延期しました。対象にはGrayscaleの申請などが含まれており、規制当局の慎重なスタンスが改めて確認されました。これにより、市場はETF関連ニュースに対する期待と失望が交錯する状況となっています。承認への期待感は根強いものの、審査の長期化が市場参加者の不透明感を強めました。
イーサリアムETFの資金流入と対比
ETF市場では、iShares Ethereum Trust(ETHA)が8月単月で24億ドルの流入を記録しました。これにより、同商品の運用資産残高は170億ドルに拡大しています。一方で、最大規模を誇るビットコインETF「IBIT」への流入額は4億5,900万ドルにとどまり、停滞感が強まりました。この資金フローの対比は、投資家の関心が一部でビットコインからイーサリアムへ移行している可能性を示しています。
市場に与える影響
新規ETF申請は市場に新たな投資機会をもたらす一方、SECの判断延期は規制リスクを意識させる材料となりました。資金流入で優位に立つイーサリアムETFは、ビットコイン主導の相場観に変化をもたらす可能性があります。投資家は、商品設計の特徴や規制当局の動向を慎重に見極める局面にあります。
機関・企業によるトレジャリー戦略の拡大
Sharps TechnologyとSolana活用
8月25日、医療機器関連のSharps Technologyは、Solanaを基盤とした4億ドル規模のトレジャリー戦略を発表しました。計画にはSolana Foundationとの合意書(LOI)が含まれ、約5,000万ドル相当のSOLを30日平均価格から15%割引で取得する構想が盛り込まれています。この発表を受け、同社株価は一時96%高となり、市場の強い関心を集めました。
B StrategyとBNBトレジャリー
暗号資産関連企業のB Strategyは、バイナンスコイン(BNB)を対象とした10億ドル規模のトレジャリー戦略を発表しました。この取り組みは、過去に10X Capitalが採用した方式を参考に設計されています。また、バイナンス創業者のファミリーオフィスであるYZi Labsが支援に関与しており、取引所のエコシステム強化を意識した動きとして注目されました。
旧マイクロストラテジーによるBTC追加取得
旧マイクロストラテジー(現ストラテジー社)は、3億6,000万ドルを投じてビットコインを3,081枚追加しました。これにより、総保有量は632,457枚に達し、流通供給量の約3.2%を占める規模となりました。同社は一貫してビットコインを長期保有戦略の中核に据えており、機関投資家の積極的な暗号資産活用を象徴する事例です。
BitMineによるETH戦略
暗号資産マイニング関連のBitMine Immersion Technologiesは、イーサリアムを19万500枚追加し、総保有量を171万3,899枚に拡大しました。評価額は約1.2兆円に相当し、同社は供給量の5%取得を中期目標に掲げています。あわせて192枚のビットコインと5億6,000万ドルの現金を保有しており、1株あたりの純資産価値(NAV)は39.84ドルと、7月末時点から大幅に増加しました。
市場全体への影響
複数の企業が相次いで暗号資産をトレジャリー資産に組み込む動きを示したことで、デジタル資産が企業財務戦略に組み込まれる流れが一層明確になりました。SolanaやBNBといった主要アルトコインの活用が目立つ一方、ビットコインとイーサリアムの圧倒的な存在感も依然として大きく、機関投資家による多様化と集中投資の両面が進んでいます。
トークナイズド株への規制強化の動き
国際規制当局と業界団体の要請
8月25日付の報道によれば、欧州証券市場監督局(ESMA)、国際証券監督者機構(IOSCO)、世界取引所連盟(WFE)が、米証券取引委員会(SEC)の暗号資産タスクフォースに書簡を送りました。書簡では、トークナイズド株式に対する投資家保護の不備を強く懸念し、監督強化を求めています。署名した団体はいずれも世界的に影響力が大きく、この要請は市場に重い意味を持ちます。
トークナイズド株とは何か
トークナイズド株は、伝統的な株式をブロックチェーン上でデジタル化したものです。投資家は株式そのものではなく、株価に連動するトークンを保有します。これにより、24時間取引、少額投資、国境を越えたアクセスが可能となり、効率性や利便性の高さから注目を集めています。ウォール街の大手金融機関を含め、幅広い市場関係者が参入を検討しています。
投資家保護を巡る課題
規制当局が問題視しているのは、トークナイズド株が本来の株式の権利や保護を備えていない点です。株主の議決権や配当の保証がなく、清算やカストディ、開示制度も整っていません。さらに、一部のプラットフォームでは「米国株と同等」と誤認させるような販売が行われており、投資家リスクが高まっています。WFEは「トークンは株式ではない」と明確に警告しました。
市場規模の拡大と規制の方向性
業界データによれば、トークナイズド証券の市場規模はすでに260億ドルを超えています。株式トークンの占有率はまだ限定的ですが、今後は主要取引所やプラットフォームの参入により拡大が見込まれます。規制当局は既存の証券法を適用する方針を示しており、販売・開示・カストディに関する厳格なルール導入が焦点となります。SEC内部でも「革新としてのトークナイゼーションは推進すべきだが、証券法遵守が前提」との立場が繰り返し表明されています。
市場への影響
トークナイズド株の成長は、金融インフラの効率化を促す可能性を秘めています。しかし規制強化が進めば、普及のスピードが抑制されるリスクもあります。投資家にとっては、新しい投資手段の拡大と、規制の下でどのように保護が確保されるかが今後の注目点となります。
ステーブルコイン利払いを巡る政策議論と制度設計
米国:利払い解禁がもたらす資金流出リスク
8月25日までの報道では、ステーブルコインへの利払い解禁が銀行からの資金流出を誘発する可能性が指摘されました。シティの幹部は、1980年代のマネー・マーケット・ファンド拡大期に類似の資金移動が起きたと説明しました。銀行団体は、利回りの高いデジタルマネーに預金が流れると主張し、最大6.6兆ドル規模の流出リスクを試算しました。結果として、銀行の調達コスト上昇や信用供与の縮小を招く懸念が示されました。
米国:GENIUS法の枠組みと「利払い」の位置づけ
GENIUS法は、発行体に対し1対1の準備金と高流動資産での裏付け、透明性の高い開示、第三者監査を義務づける設計です。同時に、発行体による利払いを明確に禁止しました。ただし、取引所や関連事業者が提供する利回りスキームは、法文上の直接規制対象外と解釈される余地が残り、銀行団体は「抜け穴」への対応を求めています。政府はドルの基軸通貨性維持の観点から、ドル建てステーブルコイン活用に前向きな姿勢も示しています。
日本:送金額上限などの制度課題
国内では、1取引あたり100万円の上限など、B2Bユースケースに制約となる設計が課題として挙がりました。米国の規制明確化の動きと対比し、日本でも預金トークンやステーブルコインの利用拡大に向けた制度整備が必要と議論されています。実務ニーズを踏まえた上限見直しや、国際的な相互認証の枠組み整備が課題として浮上しています。
市場・政策両面の含意
利払いの可否は、預金とデジタルマネーの競争条件を左右します。米国は消費者保護と金融安定を重視しつつ、ドルの国際競争力確保を狙います。日本は、既存決済インフラとの整合と企業利用の両立が鍵となります。今後は、利回り提供の扱い、準備資産の運用制約、カストディの基準化が焦点です。制度の明確化は、資金循環とイノベーションのバランス形成に直結します。
※WebX 2025は、8月25日(月)・26日(火)に東京で開催されているアジア最大級のWeb3カンファレンスです。規制当局や大手企業、暗号資産事業者が参加し、ステーブルコイン制度設計や日本特有の規制(1件100万円上限)も議論の対象となっています。本記事のテーマも、同イベントで注目された論点の一つです。
今後の展望とリスク要因
短期的な注目材料:米経済指標の発表
今週は米国の重要な経済指標が相次いで発表されます。特に、8月28日(木)の4-6月期実質GDP改定値(前期比年率、予想3.1%)と、8月29日(金)の7月PCEデフレーター(前年同月比予想2.6%、コア前年比予想2.9%)は、インフレ動向や米連邦準備制度理事会(FRB)の政策見通しに直結する内容です。前述の通り、これらの結果はリスク資産全体に影響を及ぼし、暗号資産市場にも短期的な価格変動をもたらす可能性があります。
季節要因と市場心理
9月は例年、暗号資産市場が弱含む傾向があると統計的に指摘されています。夏季の流動性低下や機関投資家のリバランスが背景とされ、過去にも下落圧力が強まったケースが見られます。このため市場参加者はシーズナリティを意識し、過剰なポジション構築を避ける傾向が強まっています。
ETF承認とトレジャリー戦略の影響
一方で、米証券取引委員会(SEC)によるETF審査や、主要企業による暗号資産トレジャリー戦略は下支え要因として注目されます。新規申請や既存ETFへの資金流入が継続すれば需給の安定に寄与する可能性があり、さらにビットコインやイーサリアムを長期保有する企業の増加は、市場の信頼性を強める材料と見なされています。
潜在的リスクの多層構造
ただし、規制強化や銀行システムリスクは依然として大きな不確定要素です。特にステーブルコインの利払い解禁を巡る議論は、銀行からの資金流出を招く懸念と直結しており、制度設計の在り方が注目されています。また、地政学的リスクや新興市場の資金フロー不安も重なれば、市場は短期間で調整局面に移行する可能性があります。投資家は複数のリスクが同時進行するシナリオを常に意識する必要があります。
結論・要点整理
本日の最大の注目点は、ビットコイン・イーサリアムの下落と、ETFを巡る動きの明暗にあります。価格は短期的に売り圧力が優勢となりましたが、一方で新規ETFの申請や既存ETFへの資金流入は、市場の中期的な成長期待を支える要因となっています。
また、機関投資家や企業による暗号資産の買い増しは引き続き強気材料です。マイクロストラテジーの追加取得やETHの大規模蓄積などは、需給構造に安定性を与える可能性があります。ただし、規制強化の動きや銀行システムリスク、米国経済指標の結果は相場に不透明感を残しています。
短期的には不安定な展開が続く見通しですが、中期的にはETF市場の進展と企業参入動向が相場の方向性を決める重要なカギを握ると考えられます。投資家は流動性や規制環境の変化を踏まえ、柔軟なリスク管理が求められます。
なお、本記事にはAIによる収集・分析データが一部含まれています。情報の正確性には十分留意していますが、最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。また、本記事は投資判断を促すものではなく、市場理解を目的とした情報提供にとどまります。
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