- BTC12.4万ドル上・ETH4,678ドル、時価総額4.24兆ドル—株高・金高と並走
- ビットコインが過去最高値を更新—ETF資金流入と需給タイト化が背景
- Grayscaleが米ETH現物ETFにステーキング導入—ETFの“所得化”が始動
- IBITはAUM1,000億ドル目前—ブラックロックETFが最収益銘柄に台頭
- 週次の資金流入は過去最大.95B—BTCに.55B、ETHに.48B
- RWA/トークナイズ前進—OndoがOasis Pro買収、PlumeがSEC登録、ARKはSecuritize出資
- 規制の焦点:EUはESMAへ監督集約、ベトナムは交換所5社の実証枠に限定
- DeFiインフラ:UniswapがGuidestar買収—AMM設計とルーティング研究を強化
- XRP LedgerはZKでプライバシー機能強化—MPTとレンディングも視野
- Polygonにアクティビスト提案—2%インフレ撤廃と買い戻し議論
- 今後の展望とリスク:直近2週間の主なイベント(時刻は日本時間)
- 要点と編集方針の整理
BTC12.4万ドル上・ETH4,678ドル、時価総額4.24兆ドル—株高・金高と並走
暗号資産は高値圏です。10月7日9時30分時点で、時価総額は4.24兆ドル、24時間出来高は1,537.3億ドルです。ビットコインは$124,715(+1.10%)、イーサリアムは$4,678.58(+4.01%)です。ドミナンスはBTC 58.3%/ETH 13%です。
暗号資産の現在地(10/7 9:30)
- 時価総額:4.24兆ドル
- 出来高(24H):1,537.3億ドル
- BTC:$124,715(24H +1.10%)
- ETH:$4,678.58(24H +4.01%)
- BTC/ETHドミナンス:58.3%/13%
- BNB:$1,225.38(+5.26%)
- SOL:$231.532(+1.26%)
- DOGE:$0.264781(+5.15%)
主要アルトにも上昇が広がっています。ただし、銘柄ごとに要因は異なります。
株式・為替・コモディティ(基準時刻に注意)
- S&P 500:6,740.28(+0.36%)/NY時間
- ナスダック総合:22,941.67(+0.71%)/NY時間
- VIX:16.37(-1.68%)/NY時間
- USD/JPY:150.54
- EUR/USD:1.1708
- 金先物(12月):$3,998.70
- XAU/USD:$3,976.15
- WTI(11月):$61.69
- ブレント(12月):$65.49
米株は落ち着いた上昇です。為替はドル高・円安が続いています。金は高値圏で推移し、株高と並走しています。
米株の数値はNY時間の終値です。暗号資産とコモディティ、為替は10/7 9:30(日本時間)時点の観測です。市場ごとに更新時刻が異なるため、比較の際は時間軸の違いに注意してください。
用語解説
- 時価総額:上場暗号資産の価格と供給量の合計。市場規模の目安。
- 出来高(24H):直近24時間の約定金額。流動性の強弱を示す。
- ドミナンス:全体に占める特定銘柄の時価総額比率。
- VIX:S&P500の予想変動率指数。投資家心理の指標。
- XAU/USD:金の店頭現物価格を米ドルで示す指標。
- 限月:先物の受渡期。例「12月限」は12月が期日。
ビットコインが過去最高値を更新—ETF資金流入と需給タイト化が背景
先日も取り上げたETF資金の流入加速を受け、ビットコインは10月6日に$125,700超で過去最高値を更新しました。8月は+35億ドルの純流入で夏場の流出を反転しました。9月も月次で持ち直し、取引所残高の減少が続いています。需給の引き締まりが価格の上振れを後押ししました。
ETFフローと需給の変化
現物ETFへの資金流入が継続しています。8月の純流入は大きく、9月もプラス圏で推移しました。長期保有者はコインを取引所から引き出す動きを続けています。売り板が薄くなるため、上方向に動きやすい地合いです。
マイナー指標とネットワークの健全性
ハッシュレートと難易度は高水準です。採掘コストの目安(損益分岐点)は$108,000付近とされます。現在水準ではマイナーの採算は確保されやすい状況です。ネットワークの安全性は維持され、信頼性の面で下支えとなりました。
季節性と他資産の動き
10月は統計的に上昇しやすい月とされます。金価格は9月末に$3,800超の最高値を付けました。希少資産への資金配分が強まり、ビットコインの上昇に追い風となりました。希少性は供給の約94.9%が既に採掘済みという構造にも表れています。年率の発行成長率は1%未満です。
デリバティブ積み上がりと短期リスク
先物・オプションの未決済建玉はサイクル高水準です。レバレッジの解消が起きると、短時間での乱高下につながる可能性があります。上値圏の定着には、ETFの持続的な資金流入と、資金調達コスト(ファンディング)の安定が重要です。
用語解説
- 現物ETF:ビットコイン現物価格に連動する上場投資信託。
- 純流入:資金の流入額から流出額を差し引いた値。
- 取引所残高:取引所に預けられたコインの総量。
- ハッシュレート:マイニング計算能力の総量。
- 難易度:採掘の難しさを示す指標。安全性と連動。
- 損益分岐点:マイナーの収支がゼロとなる価格水準。
- 未決済建玉(OI):決済されていない先物・OP契約数。
- ファンディング:先物のロング・ショート間で定期的に授受される金利。
- 発行成長率:新規発行量の年率換算。ビットコインは1%未満。
Grayscaleが米ETH現物ETFにステーキング導入—ETFの“所得化”が始動
Grayscale(米デジタル資産運用会社)は、米国の現物イーサリアムETFでステーキングを開始します。対象はEthereum Trust ETF(ETHE)とEthereum Mini Trust ETF(ETH)です。米証券取引委員会のSEC(米国の金融規制当局)が2025年9月に採用した「汎用上場基準」により、制度面の条件が整いました。価格連動に加え、ステーキング報酬という収益源を組み込む初の事例です。
導入の枠組みと運用方針
カストディはCoinbase(米ナスダック上場の大手暗号資産取引所・カストディ)が担います。あわせて複数のバリデータ提供者を活用します。ファンドは解除(アンステーク)キューや日々の償還需要を見ながら、ステーク比率を機動的に調整します。比率はファンドのウェブ上で日次開示される運用です。
なぜ今か—規制面の変化と商品性
SECの汎用上場基準は、コモディティ型ETPの上場手続きを簡素化しました。これにより、プルーフ・オブ・ステーク資産でも、所定の開示と管理の下でステーキングを組み込めます。ETFは単なる価格エクスポージャーから、インカム(利回り)を伴う構造へと拡張します。
投資家への意味合い
投資家は証券口座を通じてETH価格連動とステーキング収益の双方にアクセスできます。直接保有や自己運用に比べ、保管や運用の実務負担が軽くなります。一方で、流動性スリーブ(現金等の流動資産)で償還に対応できない局面も理論上はあり得ます。Grayscaleは市場環境に応じた比率調整でリスク管理を行う方針です。
市場への波及—“所得化”する暗号資産ETF
ETHのETFにステーキングが実装されると、商品性が一段と多様化します。価格変動だけでなく、ネットワーク参加収益がリターン源となるためです。発行体各社の追随や、他のPoS資産での採用も注目点です。足元では暗号資産投資商品の週次資金流入も拡大しており、商品面の進化と資金フローの改善が同時進行しています。
確認事項と留意点
- ステーキング水準は、市況・償還動向・解除待ち状況で変動します。
- ステーキングに起因する制約資産は、開示区分に従い明確に報告されます。
- 流動性スリーブの範囲を超える償還には、応答に時間を要する場合があります。
用語解説
- Grayscale:米国拠点のデジタル資産運用会社。暗号資産の上場商品を多数運用。
- Coinbase:米ナスダック上場の大手暗号資産取引所・カストディ事業者。
- SEC:米証券取引委員会。証券市場と上場商品の規制当局。
- 現物ETF:原資産を直接保有し、価格に連動する上場投資信託。
- ETP:取引所に上場する投資商品(ETFやETNなどの総称)。
- ステーキング:ETHを預けて取引検証に参加し、報酬を得る仕組み。
- 解除(アンステーク)キュー:ステーク解消から引き出しまでの待機行列。
- 流動性スリーブ:日々の償還に備えた現金や短期資産の保有枠。
IBITはAUM1,000億ドル目前—ブラックロックETFが最収益銘柄に台頭
BlackRock(米大手資産運用会社)のiShares Bitcoin Trust(IBIT)は、運用資産残高(AUM)が1,000億ドルに接近しています。信託報酬は年0.25%です。現在水準を前提とした年換算収益は約2億4,450万ドルとなります。同社の上場投資信託群の中で、主要な収益源に浮上しました。
成長ペース—ローンチ435日で大台目前
IBITは設定から435日で大台到達が視野に入っています。過去の大型ETFと比べても、極めて速い拡大ペースです。規模の伸びは、現物型の設計と証券口座からのアクセス容易性に支えられています。
フロー動向—BTCとETHで月間100億ドル規模
IBITとiShares Ethereum Trust(ETHA)の合計で、月間流入は約100億ドルに達しています。ビットコインETFの通算フローは約600億ドルです。年初来の積み上がりも加速しており、ETF経由の資金導線が太くなっています。
収益性の背景—手数料水準と資産規模のかけ算
IBITの手数料は0.25%です。巨大なAUMと掛け合わせることで、収益が安定的に発生します。低コストのインデックスETFが多い中で、同商品は相対的に収益寄与が大きい構造です。
競合比較—伝統ETFを上回る稼働状況
IBITは、運用年数の長い大型ETFと並ぶ収益源になっています。暗号資産という新興アセットにもかかわらず、流入の継続性が確認されています。ETHAの追随も、セグメント全体の厚みを高めています。
留意点—フローの循環性と市場ボラティリティ
ETFの資金フローは循環的です。リスク選好の変化で流入が鈍化する局面があります。暗号資産市場のボラティリティも基準価額の変動要因です。短期の資金出入りに左右される点は、継続的な観測が必要です。
用語解説
- BlackRock:米国の世界最大級の資産運用会社。iSharesブランドでETFを展開。
- IBIT:iShares Bitcoin Trust。ビットコイン現物を裏付けとする米国上場の投資信託。
- ETHA:iShares Ethereum Trust。イーサリアムの価格に連動する現物型商品。
- AUM:運用資産残高。ファンドが保有する資産の時価総額。
- フロー:ファンドへの資金の流入・流出額。
- 信託報酬:ファンド運用に対する年率手数料。AUMに対して課される。
週次の資金流入は過去最大.95B—BTCに.55B、ETHに.48B
CoinShares(英デジタル資産運用会社)の週報によると、10月3日終了週のデジタル資産投資商品への資金流入は59.5億ドルでした。週間として過去最大です。内訳はビットコイン(BTC)に35.5億ドル、イーサリアム(ETH)に14.8億ドルです。
流入の規模と内訳
ビットコイン関連商品は週間で過去最高の純流入を記録しました。イーサリアム関連も大幅な流入です。両者で週次合計の大半を占め、市場の資金回帰を示しました。
地域・銘柄の広がり
米国が流入を主導しました。欧州やカナダでも資金が入りました。ソラナ(Solana)やXRP関連の商品にも記録的な流入が確認され、銘柄の裾野が広がっています。
背景要因
CoinSharesは要因として、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げへの遅れた反応を挙げました。加えて、10月1日のADP雇用統計の下振れや、米政府機関の一時閉鎖をめぐる懸念も指摘しました。リスク分散の動きが強まった形です。
市場との呼応
ETF経由のアクセス拡大が進み、スポット価格の高値更新と呼応しました。米国の現物ETFに資金が集まり、流入の持続性が意識されています。一方で、資金フローは循環します。短期の反動も想定されます。
用語解説
- CoinShares:英国拠点のデジタル資産運用会社。週次の資金フロー統計を公表。
- ETF(上場投資信託):取引所で売買できる投資信託。証券口座からアクセス可能。
- 現物ETF:原資産を直接保有し、価格に連動させるETFの構造。
- 純流入(ネットフロー):資金の流入額から流出額を差し引いた金額。
- FOMC:米連邦公開市場委員会。金融政策を決定する会合。
- ADP雇用統計:米民間の雇用動向を示す月次データ。
- Solana:高速処理を特徴とするレイヤー1ブロックチェーン。
- XRP:XRP Ledgerのネイティブ資産。送金用途で利用されることが多い。
RWA/トークナイズ前進—OndoがOasis Pro買収、PlumeがSEC登録、ARKはSecuritize出資
実世界資産(RWA)の証券化を巡り、規制準拠の動きがまとまりました。Ondo Finance(米RWAプロバイダー)はOasis Proを買収、Plume Network(RWA特化L2)は米証券取引委員会(SEC)の登録を取得しました。さらに、ARK Invest(米運用会社)はSecuritizeに出資しています。
OndoがOasis Proを買収し、発行から流通までを一体化
10月6日の報道によると、Ondo FinanceはOasis Proを買収しました。Oasis Proは米FINRA会員のブローカー・ディーラーです。加えて、代替取引システム(ATS)とトランスファーエージェント(TA)の登録も有します。
これにより、Ondoは一次発行、私募、アンダーライティング、二次流通を一気通貫で扱えます。法定通貨とステーブルコイン(USDCやDAI)での決済実績も伝えられています。記事は、Ondoの運用資産が約16億ドルに達すると述べています。
Oasis Proは2020年からFINRA会員です。規制整備に関与した点も報じられました。今回の買収で、米国内でのトークン化証券市場の整備が前進します。将来規模については、2033年までに18兆ドル超へ拡大する見方も示されています。
PlumeがSECトランスファーエージェント登録を取得
Plume NetworkはRWA向けのレイヤー2です。同社はSECのトランスファーエージェントに登録しました。これにより、株主名簿、名義書換、コーポレートアクションの管理をオンチェーンで処理できます。
会社は、SECやDTCCとの接続を想定した運用を説明しました。12月の資金調達は2,000万ドルです。記事によると、機関向け信用商品を中心に6,200万ドル超のトークン化を支援しました。
RWA市場の推計は約330億ドルです。現時点の中心は短期国債などの低リスク商品です。今後は株式や私募などの領域にも広がる可能性が指摘されています。
ARKがSecuritizeへ約1,000万ドルを出資
CoinDeskの試算によると、ARK Venture FundはSecuritizeへ約1,000万ドルを投じました。期末開示時点で、同ファンドの8番目に大きい保有です。比率は3.25%と示されています。
Securitizeは2017年創業です。BlackRock、Hamilton Lane、Apolloと連携し、累計46億ドルのトークン化を実施しました。BlackRockのトークン化マネー・マーケット・ファンド「BUIDL」の発行主体としても知られます。
RWAの市場規模は年初来で112%増の約330億ドルとされます。別の推計では、2030年代に数十兆ドル規模へ拡大する見通しも言及されています。大手運用会社の参画は、この潮流を後押しします。
接続される“証券の裏方”と24時間市場
今回の三つの動きは、発行、売買、名義管理の接続を強めます。ブローカー・ディーラー、ATS、トランスファーエージェントがそろうと、従来の裏方業務がオンチェーンに移行します。ステーブルコイン決済の採用は、市場の24時間化にも寄与します。
証券のバックオフィスをブロックチェーンに載せる流れは加速しています。制度準拠の選択肢が増えたことで、RWAの商流は拡大しやすくなります。インフラ面の整備が、発行体と投資家の双方の参入障壁を下げます。
用語解説
- Ondo Finance:米RWAトークン提供企業。運用資産は記事で約16億ドルとされる。
- Oasis Pro:米デジタル証券インフラ企業。BD/ATS/TAの登録を保有。
- Plume Network:RWA特化のレイヤー2。SECのトランスファーエージェントに登録。
- Securitize:トークン化プラットフォームの大手。BlackRockのBUIDLを発行。
- ARK Invest:米資産運用会社。ベンチャーファンドを通じSecuritizeへ出資。
- ブローカー・ディーラー(BD):有価証券の売買を仲介・自己売買する業者。
- ATS(代替取引システム):取引所外で証券を売買できる電子プラットフォーム。
- トランスファーエージェント(TA):株主名簿管理や名義書換を担う機関。
- FINRA:米金融業規制機構。証券会社の自主規制団体。
- DTCC:米国の証券決済・保管機関。清算・保管の中核を担う。
- ステーブルコイン:法定通貨に価値を連動させた暗号資産。例:USDC、DAI。
- AUM:運用資産残高。ファンドや企業が運用する資産の総額。
- RWA(実世界資産):国債、社債、株式などの現実資産を指す総称。
規制の焦点:EUはESMAへ監督集約、ベトナムは交換所5社の実証枠に限定
欧州連合(EU)は暗号資産規制の運用を一段と中央集権化します。域内で導入済みのMiCA(暗号資産市場規制)の下で、分断された監督を是正するためです。欧州証券市場監督局(ESMA)への直接監督移管を、欧州委員会が検討しています。目的はライセンス基準の標準化と、国境を越える事業の一体運用です。
EU:ESMAへの集中監督でMiCAの一枚岩化を狙う
現行のMiCAでは、事業者の許認可は各国当局が出します。この仕組みが監督の重複や基準の差を生みました。ESMAのロス議長は、欧州委員会が監督権限の移管案を準備中と説明しています。ねらいは、専門性をESMAに集約し、審査のばらつきを抑えることです。
域内パスポート(他国でも営業できる権利)を巡り摩擦もあります。フランスでは他国発のライセンスに追加条件を課す議論が報じられました。マルタの認可プロセスには、ESMAのレビューで課題も指摘されています。標準化は、こうした綻びの是正に直結します。
一方で、小規模国は先行して許認可を出しています。リトアニアはRobinhood Europeを認可しました。マルタはOKXやCrypto.comを承認し、ルクセンブルクではBitstampやCoinbaseが登録済みです。集約監督は、こうした各国主導の流れをESMAの基準へ統一します。
ベトナム:交換所の実証を「最大5社」に限定
ベトナム政府は交換所の実証枠を最大5ライセンスに絞ります。財務副大臣は会見で方針を明らかにしました。まだ正式応募はありませんが、各社は技術準備と事前協議を進めています。資本要件などの参入条件は厳格で、段階的な導入を想定します。
認可は財務省が主導します。公安省やベトナム国家銀行と連携し、課税や会計、運用基準を整備します。少なくとも1社の認可を2026年までに目指しますが、時期は各社の準備状況に左右されます。実証は2025年1月施行のデジタル産業法の枠組みで運用されます。
同国は暗号資産の普及度が高い国です。業界関係者は、枠の少なさと高い参入障壁で、流動性が海外に流れる懸念を指摘します。もっとも、リスク管理を優先する当局は、段階導入でルールを固める構えです。
影響と見通し:広域接続と慎重導入の対照
EUは越境営業の障害を減らし、事業者のコストを下げます。パスポートの実効性が増せば、取引所やカストディアンの域内展開は加速します。ベトナムは、少数精鋭の枠で市場秩序を優先します。透明な実証データが蓄積されれば、段階的な拡大の余地も生まれます。
両地域のアプローチは対照的です。EUは「広域接続」を重視し、ベトナムは「慎重導入」を選びます。どちらも最終目的は同じです。投資家保護と市場の信頼性を高め、健全な成長を促すことにあります。
用語解説
- ESMA:欧州証券市場監督局。EU全体の市場監督と規制調整を担う機関。
- 欧州委員会:EUの執行機関。法案提出や政策運営を担当。
- MiCA:暗号資産市場規制。発行体やサービス提供者の共通ルールを定めるEU法。
- パスポーティング:一国の認可でEU域内の他国でも営業できる制度。
- FINMA/各国当局:EUではなくスイスの当局はFINMA。EU域内は各国の「国民当局(NCA)」が一次監督。
- デジタル産業法(ベトナム):2025年施行。デジタル資産や先端産業の制度基盤を整備する法律。
- 国家銀行(SBV):ベトナムの中央銀行。金融政策と決済監督を担う。
DeFiインフラ:UniswapがGuidestar買収—AMM設計とルーティング研究を強化
Uniswap Labs(米発のDeFi開発企業)は、Guidestarを買収しました。発表は10月6日です。目的は自動マーケットメイカー(AMM)の設計研究と、注文ルーティングの高度化です。Uniswap v4の拡張性を土台に、資産やチェーンの特性に合わせた市場設計を前進させます。あわせて、UniswapXの越境集約による実行品質の向上も狙います。
買収の狙い:v4の拡張性と研究力を一体化
Uniswap v4は「フック」で機能を拡張できます。手数料や清算条件を柔軟に設定できます。GuidestarはAMMの市場設計に強みがあります。優先順序制や先着順モデルなど、異なる実行環境にも対応します。両者の統合で、安定資産やLST、RWAなどに最適化したプール設計が進みます。
目的は価格発見の精度向上です。滑り(スリッページ)と在庫リスクの抑制も重視します。結果として、流動性提供者とトレーダー双方のコスト低下が期待されます。
執行品質の強化:UniswapXとスマートルーティング
UniswapXはオフチェーン見積もりとクロスチェーン集約の枠組みです。複数の流動性源から最良経路を探索します。Guidestarの研究は、このルーティングを支えます。異なるチェーンやL2での注文処理差を吸収します。狙いはスリッページとMEVコストの最小化です。失敗取引の減少やガス効率の改善も視野に入ります。
業界への波及:分散流動性の「最適経路」標準化
マルチチェーンで流動性は分散しています。最適経路を標準化できれば、ロングテール資産の執行品質が安定します。RWAのような実需資産にも、価格の一貫性を提供できます。今回の買収は、アグリゲーター間の競争にも影響します。ユーザー体験の平準化が進めば、DeFiの利用拡大につながります。
用語解説
- Uniswap Labs:米発のDeFi開発企業。Uniswapプロトコルの主要開発者。
- Uniswap:AMM型の分散型取引所(DEX)。プールで自動売買を行う仕組み。
- Uniswap v4:フック機能で手数料やロジックを拡張できる次期版。
- Guidestar:AMMとルーティングの研究チーム。Alex Nezlobin氏が主導。
- AMM:自動マーケットメイカー。数式に基づき価格と在庫を更新する仕組み。
- ルーティング:複数の流動性源から最良の交換経路を選ぶ処理。
- UniswapX:オフチェーン見積もりとクロスチェーン集約の注文執行プロトコル。
- LST:リキッド・ステーキング・トークン。ステーキング報酬を反映するトークン。
- RWA:実世界資産。国債や株式などをトークン化した資産。
- MEV:マイナーやバリデータ等が並び替えで得る超過利益。
- 優先順序制 / 先着順:トランザクションの並べ方の違い。実行特性に影響。
XRP LedgerはZKでプライバシー機能強化—MPTとレンディングも視野
Ripple(米国のフィンテック企業)は、XRP Ledger(分散型台帳)にゼロ知識証明を導入します。目的は、取引内容を秘匿しつつ、規制要件に適合させることです。まずは「プライベートかつコンプライアンス対応」の送金機能を実装します。発表は10月のエンジニアブログに基づきます。企業の資金移動や決済での活用を想定します。
段階的ロードマップ:機密送金からMPT、そしてXRPL 3.0
第1段階は、ゼロ知識証明で送金の中身を隠す機能です。送金が正当である事実だけを証明します。規制当局や監査人には、必要に応じて検証の道を残します。次の段階は2026年の予定です。機密性を備えたMulti-Purpose Tokens(MPT)に拡張します。RWAの所有情報など、機密データの保護を想定します。
XRPL 3.0ではネイティブのレンディングも視野に入ります。借入、貸付、清算の一体運用を目指します。台帳上での信用供給を標準機能として提供します。これにより、企業や金融機関のユースケースが広がります。
企業ユースを想定した「選択的開示」と運用面の工夫
設計の焦点は「誰に何を見せるか」です。公開台帳の透明性を残しつつ、機密情報は秘匿します。たとえば、競合に価格や在庫を見せない運用が可能です。一方で、コンプライアンスには対応します。KYCや監査の要請時に、必要範囲で検証可能にします。企業会計や内部統制の要件を意識した作りです。
市場への影響:RWA、決済、与信での採用余地
MPTはRWAの発行と流通に直結します。権利情報や価格条件を安全に扱えます。資産管理や私募の電子化にも適します。レンディングの標準化は、流動性の厚みを生みます。結果として、決済と与信が同一基盤で動きます。機関投資家にとって、運用と法令順守の両立がしやすくなります。
開発状況と留意点
今回の内容はロードマップの提示です。機能の正式提供には、実装と監査が必要です。ゼロ知識証明は計算コストが課題です。手数料や待ち時間の最適化が鍵となります。法域ごとのプライバシー規制との整合も重要です。段階導入と実証の進展が注目点となります。
用語解説
- Ripple:米国のフィンテック企業。送金ネットワークやXRPLのエコシステムを推進。
- XRP Ledger(XRPL):XRPを原生通貨とする分散型台帳。高速送金に強み。
- ゼロ知識証明(ZK/ZKP):内容を明かさず「正しい」ことだけを証明する暗号技術。
- プライベート取引:金額や相手先などの詳細を非公開にする送金形態。
- MPT(Multi-Purpose Tokens):多目的トークン。RWAなど機密性の高い権利情報の表現に対応。
- RWA:実世界資産。国債や株式、コモディティなどのトークン化資産。
- XRPL 3.0:XRPLの主要アップデート案。レンディング機能の追加を視野。
- レンディング:暗号資産の貸借を行う機能。利息や担保管理を伴う。
- コンプライアンス対応:KYCや監査、当局要請への選択的開示を可能にする設計。
Polygonにアクティビスト提案—2%インフレ撤廃と買い戻し議論
Polygon(イーサリアム拡張のL2エコシステム)で、トークンPOLの供給設計を見直す提案が浮上しました。提案は年2%のインフレ撤廃と、トレジャリーによる買い戻しまたはバーンの導入を求めます。目的は、継続的な新規発行が価格に与える下押し圧力を抑えることです。コミュニティの議論は進行中です。
提案の要点:固定または減衰供給への転換
提案は二つの選択肢を示します。第一はインフレ率を0%にして固定供給へ移行する案です。第二は段階的にインフレ率を引き下げる案です。たとえば四半期ごとに0.5%ずつ低下させ、最終的に0%へ到達させます。あわせて、プロトコルの資金(トレジャリー)で市場からPOLを買い戻し、バーンで流通量を減らす案も論じられています。
背景:POLのパフォーマンスと現行設計
POLは2024年にMATICから移行しました。移行時に年2%の新規発行が導入されました。原資はバリデータ報酬やエコシステム助成に充てられます。一方で、継続的な発行は売り圧の要因になります。価格低迷が続く中で、発行抑制と需要喚起の組み合わせを求める声が強まりました。
主な論点:報酬原資とネットワーク安全性
インフレ撤廃は供給の希少性を高めます。しかし、バリデータ報酬の原資が細ります。報酬が低いと、検証者の離脱や集中化のリスクが生じます。そこで、手数料収入やトレジャリーの配分で補う設計が必要です。買い戻しの原資確保や継続性も検討課題です。
コミュニティの反応と今後の手続き
開発側の関係者は議論に反応しています。最終決定にはガバナンス手続きが必要です。経済モデルの検証、パラメータの試算、段階導入の計画が求められます。発行抑制とセキュリティ維持の両立が審査基準になります。
市場への影響:競争環境と資本効率
L2間の競争は激化しています。手数料水準、開発者基盤、資本効率が評価軸です。発行抑制と買い戻しは資本効率を高めます。ただし、短期の価格効果と長期の安全性を両立させる必要があります。バリデータ数、ステーキング利回り、TVLなどの指標が確認点になります。
用語解説
- Polygon:イーサリアムと接続するL2エコシステム。スケーリング技術を提供。
- POL:Polygonのネイティブトークン。MATICからの移行先。
- インフレ率:トークンの年率発行割合。供給増で価格に下押し要因となることがある。
- 買い戻し/バーン:トレジャリーが市場から買い、焼却で流通量を減らす施策。
- トレジャリー:プロジェクトの資金管理口座。助成や買い戻しの原資となる。
- バリデータ:取引の検証者。報酬でセキュリティ水準を維持する。
- TVL:Total Value Locked。プロトコルに預けられた資産総額。
- ガバナンス:コミュニティが仕様変更を決定する仕組み。投票や提案で進む。
今後の展望とリスク:直近2週間の主なイベント(時刻は日本時間)
今後2週間は、金利と物価の判断材料が相次ぎます。政策当局のスタンスや物価の鈍化度合いは、金利期待とドル相場に影響します。その結果、暗号資産の資金流入やボラティリティにも波及します。以下に日付と時刻を明記して整理します。各国の事情で時間が前後する可能性に留意してください。
イベント一覧(JST)
- 10/8(水)10:00 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利
- 10/8(水)27:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
- 10/9(木)20:30 欧州中央銀行(ECB)議事要旨
- 10/10(金)21:30 カナダ雇用統計
- 10/15(水)21:30 米9月消費者物価指数(CPI:総合/コア)
- 10/16(木)15:00 英8月国内総生産(GDP)
- 10/16(木)21:30 米小売売上高
- 10/17(金)18:00 ユーロ圏HICP改定値
27:00は翌日3:00を指します。米イベントの多くは日本夜間に発表されます。
市場への影響の見方
金利系イベントは実質金利を通じてリスク資産に影響します。タカ派寄りの示唆はドル高・金利高を促し、暗号資産には逆風です。一方、CPIやHICPの鈍化は金利低下期待を強め、リスク選好を下支えします。小売や雇用は景気の強弱を示し、スタグフレーション懸念や軟着陸観測に直結します。暗号資産では、ETF資金フロー、為替、金利の三つ巴で短期の値動きが増幅される点に注意が必要です。
補足:米政府機関の一部閉鎖(シャットダウン)に伴う注意点
米連邦政府の一部閉鎖が続く場合、統計公表や規制業務に遅延が出る可能性があります。とくに商務省所管の統計(小売売上高やGDPなど)は、過去の事例で延期が発生しました。一方、労働省のCPIや雇用統計は公表が継続される場合もありますが、確実ではありません。
市場監督当局では、SEC(米証券取引委員会)やCFTC(米商品先物取引委員会)が最小限業務を優先します。新規の審査や承認手続き(ETF関連を含む)は、進捗が鈍るリスクがあります。イベント時刻と内容は直前で変更される可能性があるため、当日の公式発表を確認してください。
価格面では、不確実性の上昇が金利期待やドル相場に影響します。金利低下観測でリスク資産が買われる局面もあれば、リスク回避で逆行する場面もあります。暗号資産はETFフローと金利・為替の組み合わせで、短期の値動きが増幅しやすい点に留意が必要です。
用語解説
- RBNZ: ニュージーランドの中央銀行。政策金利を決めます。
- FOMC議事要旨: 米利上げ・利下げの判断材料。発言のトーンが焦点です。
- ECB議事要旨: ユーロ圏の金融政策運営の詳細。インフレ見通しが鍵です。
- CPI/コアCPI: 米物価指標。コアは食品・エネルギーを除き、基調を示します。
- HICP: ユーロ圏の調和消費者物価指数。各国比較が可能です。
- 実質金利: 名目金利からインフレ率を差し引いた金利。資産価格に影響します。
要点と編集方針の整理
本日の核は3点です。第一に、ビットコイン(BTC)が過去最高値(ATH)を更新しました。第二に、イーサリアム(ETH)の米現物ETFでステーキングが解禁されます。第三に、ブラックロック(米大手資産運用)によるビットコインETF「IBIT」の運用資産(AUM)が1,000億ドル目前に拡大しています。
これらは共通して、既存金融の受け皿が広がったことと、現物の需給がタイト化していることを示します。ETFを通じた資金の入り口が増え、同時にステーキング導入で売り圧力となる可動在庫が減る構図です。市場では、週次フローの過去最大更新と価格上昇が呼応しています。
周辺テーマでは、実物資産のトークン化(RWA)と規制整備が進展しています。発行から流通、管理までの業務がオンチェーンに近づく一方、域内監督の一元化やパイロット制度の整備で、各地域の枠組みが具体化しています。これらは、中期的な資金導線の拡充要因です。
編集方針(本日の読みどころ)
記事全体では、以下の順で整理します。
- 価格×フロー:BTCのATH更新とETFフロー拡大の因果を確認。
- 機能拡張:ETH現物ETFへのステーキング導入がもたらす「所得化(イールド化)」の影響。
- 受け皿の拡大:IBITの規模拡大とRWA実装・規制整備の前進が、中期の資金循環に与える示唆。
- リスク補足:デリバティブ建玉の積み上がり、イベント接近時のボラティリティ、米政府機関の一部閉鎖による審査・統計の遅延可能性。
次のチェックポイント(時刻は日本時間)
- 10/8(水)10:00 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利、同日 27:00 米FOMC議事要旨
- 10/9(木)20:30 欧州中央銀行(ECB)議事要旨
- 10/10(金)21:30 カナダ雇用統計
- 10/15(水)21:30 米9月CPI(総合・コア)
- 10/16(木)15:00 英8月GDP、21:30 米小売売上高
- 10/17(金)18:00 ユーロ圏HICP改定値
これらのイベントを通じて、フローの持続性とボラティリティの波を点検します。時刻や内容は現地事情で変更される場合があります。
用語解説
- ATH(All-Time High):過去最高値。
- ETF(上場投資信託):取引所で売買できる投資信託。現物型は対象資産を保有。
- ステーキング:保有する暗号資産をネットワーク運用に預け、報酬を得る仕組み。
- AUM:運用資産残高。ファンドの規模を示す指標。
- RWA(Real-World Assets):国債や株式など実在資産をブロックチェーン上で表現する取り組み。
本記事にはAIによる収集・分析データが一部含まれます。情報の正確性には十分留意していますが、最終的な判断はご自身の責任でお願いします。
また、本記事は投資判断を促すものではなく、市場理解を目的とした情報提供にとどまります。
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