- 本日のポイント(60秒サマリー)
- 市場概況:14日の終値と広い日中レンジ、リスクオフ再燃で重い地合い
- ETH現物ETFに単日.29億の資金流出(背景:通商リスクと清算余波)
- Binanceの補償対応、追加億の支援策を発表
- 米司法省が約127,271BTC(約0億)の没収を求める民事申立
- 日本:暗号資産のインサイダー取引を金商法で禁止へ
- トラディFiの前進:カストディ計画、トークナイゼーション、欧州ETN参入
- ステーブルコインとインフラ:S&P×Chainlink、Stripeの信託銀行申請、Safe×Circle
- イーサリアム:FusakaがSepolia稼働、ブータンは国家IDをETHへ統合
- デリバティブの裾野拡大:CMEでXRP/SOLのオプション開始
- 今後の注目:英GDP・米小売・ユーロ圏HICP、中国GDP、日本/米CPI
- 結論・要点整理
本日のポイント(60秒サマリー)
一言要約:広い値幅の中で持ち直し模索。ETH ETFの資金流出と法執行・規制の強化、さらにトラディFi/インフラ前進が交錯し、相場はマクロ指標と通商ヘッドラインに敏感です。
今日のハイライト
- 市場概況:BTC終値$113,030、日中レンジ$115,401→$109,948。VIX20.81、ドル高(USD/JPY151.62)。
- フロー:米スポットETH ETFが$4.29億流出(10/13)。現物BTC ETFの売買高は$97億(10/10)、$67億(10/13)。
- 取引所対応:Binanceが$4億の追加支援($3億バウチャー+$1億低利ローン)。
- 法執行:米司法省が127,271BTC(約$140億)の民事没収を申立。過去最大級。
- 国内規制:未公開情報を用いた暗号資産の売買を金商法で明記へ。2026年に改正案提出目標。
- トラディFi:シティが2026年カストディ開始計画。ブラックロックはトークン化技術を内製、アムンディはBTC ETN準備。
- ステーブル・インフラ:S&P×Chainlinkで安定性評価をオンチェーン配信。Stripe子会社は連邦信託銀行免許申請、Safe×CircleはUSDC運用を強化。
- テック・実需:イーサリアムFusakaがSepolia稼働。ブータンは国家IDをETHへ統合。
- デリバティブ:CMEでXRP/SOLオプション開始。規制市場でアルトのヘッジ手段が拡大。
今週・来週のイベント(JST)
- 10/16:英国8月GDP、米9月小売
- 10/17:ユーロ圏9月HICP
- 来週:中国7–9月GDP(10/20)、日本9月CPI(10/24)、米9月CPI(10/24)
- パウエル講演(10/14):政策はデータとリスク評価で決定、会合ごとに判断。数カ月以内にQT停止接近の可能性に言及。
- 注意:米政府機関の一部閉鎖で統計公表の遅延リスク。
数値スナップショット
- 時価総額/出来高: $3.86兆/$264.49B
- BTC: 終値$113,030(高$115,401/安$109,948)
- ETH: $4,104.20(24H -3.24%)
- ドミナンス: BTC 58.6%/ETH 12.9%
- 金/原油: Gold先物 $4,178.90/WTI $58.62
詳細は以下の各セクションへ。
市場概況:14日の終値と広い日中レンジ、リスクオフ再燃で重い地合い
ビットコインの1日の値動き
14日のビットコインは終値$113,030でした(15日は寄り付きのみ)。
同日は$115,401から$109,948までの広いレンジを往来しました。清算の余波が続き、見出しに反応しやすい地合いです。
市場の規模と資金の偏り
- 暗号資産の時価総額$3.86兆、24H出来高$264.49億。
- ドミナンス:BTC 58.6%、ETH 12.9%。
- ETHは$4,104.20、24時間で-3.24%。
株式・VIX・為替・コモディティ
- 米株:ダウ+0.44%、S&P500-0.16%、ナスダック-0.76%。
- VIXは20.81。不安心理がやや強い水準です。
- 為替:USD/JPY 151.62。ドル高が続きます。
- 金先物:$4,178.90と堅調。WTI原油:$58.62と弱含み。
株価指標の表示時刻は米東部時間です。暗号資産は24時間取引のため、時間帯の違いに注意が必要です。
全体感と本日の見方
清算後でレバレッジは縮小しました。値幅は広く、短期の方向感は出にくい状況です。
資金は大型銘柄に集まりやすく、BTCとETHが市場を主導しています。
通商関連のヘッドラインや政策発言が、当面のセンチメントを左右します。
用語解説
- 終値:その日の取引終了時点の価格。
- レンジ:ある期間の高値と安値の幅。
- 時価総額:市場に流通する資産価値の合計。
- 出来高:一定期間の取引数量または金額。
- ドミナンス:市場全体に占める特定銘柄の比率。
- VIX:S&P500の予想変動率。高いほど不安が強い。
ETH現物ETFに単日.29億の資金流出(背景:通商リスクと清算余波)
何が起きたか
米国のスポット型イーサリアム(ETH)ETFは、10月13日に$4.29億の資金流出となりました。先週は純流入が続いていましたが、直近で資金の向きが反転しました。先日も触れたETFフローですが、短期の資金循環が大きくぶれています。
反転の背景
きっかけは、対中関税のヘッドラインと、週末の大規模な強制清算です。投資家は守りに傾き、リスク資産から資金を引き上げました。こうした動きは、構造要因というより「マクロ反射」として説明されています。
出来高は膨らむが、資金は戻らず
ETFの売買高は急増しました。10月10日は現物ビットコインETFの合算で$97億、13日も$67億に達しました。ブラックロックのIBITは10日に$69億を処理し、過去2番目の水準でした。
一方で、ネットの資金流入は伸びていません。売買は活発でも、資金の新規流入が限定的なため、価格面の支えは弱くなりました。ETHに関しては、13日に流出超へ振れたことが象徴的です。
市場の見方
専門家の一部は、今回の流出を短期の防御的ポジション調整とみています。前週にETH ETFへ資金が入っていた事実も残り、長期の撤退を示す材料は不足しています。もっとも、通商関連の見出しが続く間は、フローのぶれが起きやすい状況です。
用語解説
- スポットETF:先物ではなく、現物資産を裏付けとする上場投資信託。
- 資金流出(アウトフロー):ETFから資金が引き上げられた金額。
- 売買高(出来高):売買された総額。資金の新規流入とは別の概念。
- 強制清算:証拠金不足により、取引所が自動でポジションを閉じること。
- マクロ反射:政治・経済の大きなニュースに対する短期的な資金の反応。
Binanceの補償対応、追加億の支援策を発表
先日からの補償に「上乗せ」
先日も取り上げたBinance(大手暗号資産取引所)の補償対応ですが、新たに$4億の支援策を公表しました。内訳は、トレーダー向けの$3億(バウチャー配布)と、エコシステム向けの$1億(低利ローン)です。市場の大きな変動で生じた損失に対し、段階的に支援の枠を広げる狙いです。
億バウチャー:対象と条件
配布対象は、10月10日00:00 UTC〜10月11日23:59 UTCに先物・マージンで強制清算が発生した口座です。さらに、損失が$50以上、かつ総資産の30%以上であったことが条件です。判定には10月9日23:59 UTC時点の資産スナップショットが使われます。配布は最長96時間以内に行うとしています。
億ローン:流動性のつなぎ
もう一つの柱は、$1億の低利ローンファンドです。対象は、Binance関連の事業者や機関投資家などの「エコシステム参加者」です。急変後の資金繰りを下支えし、決済遅延やスプレッド拡大を抑える狙いがあります。
責任の線引きと、信認回復の意図
Binanceは「損失の法的責任は負わない」としつつ、補償や支援で信認の回復を図る姿勢です。今回の$4億に加えて、既報の$2.83億の即時補填や、BNB Chainの$4,500万相当のリロード・エアドロップも実施されています。合算すれば、エコシステム向けの救済は$7.28億規模まで拡大しました。
ユーザーの受け止め:評価と不満が併存
評価する声もある一方で、「補償が不足している」「価格参照の不具合が清算を増幅した」との批判も見られます。週末の急変では、一部アルトの価格表示やオラクル連携に不整合が出たとの指摘があり、設計面の改善余地が注目点となりました。
今回の位置づけ
今回の追加策は、短期の痛点を和らげる応急措置という性格が強いと言えます。根本的な再発防止には、価格参照(オラクル)の多元化、清算ロジックや担保評価の見直し、UIと残高表示の安定化など、インフラ面の改善が必要です。Binanceは段階的に対応を進めていますが、利用者保護と市場機能の両立が問われます。
用語解説
- バウチャー:取引所が配布する引換券。手数料や損失の一部相殺などに使われる。
- 低利ローンファンド:低い金利で資金を貸し出す枠。流動性不足を一時的に補う。
- 強制清算:証拠金が不足した際、取引所が自動でポジションを解消する仕組み。
- スナップショット:特定時点の残高を記録したデータ。配布や判定の基準に用いる。
- オラクル:ブロックチェーン外の価格データを取り込む仕組み。精度と遅延が清算に影響する。
米司法省が約127,271BTC(約0億)の没収を求める民事申立
ポイント:規模と位置づけ
米司法省は、カンボジア拠点の組織に関連するとして127,271BTCの民事没収を申立てました。金額は約$140億で、報道では過去最大級とされています。資産は当局の発表と各紙の報道によれば、すでに米政府の管理下にあります。
事件の骨子:詐欺スキームと関連人物
訴状は、いわゆる「ピッグ・ブッチャリング」型の投資詐欺に焦点を当てています。米検察は、中心人物とされる実業家を電信詐欺共謀とマネロン共謀で訴追しました。被疑者は身柄確保に至っておらず、裁判の行方は未確定です。
並行措置:制裁と管轄機関の動き
同日に、米財務省は関係企業への制裁指定を発表しました。法執行と制裁を同時に進めることで、資金の移転や換金を事前に遮断する狙いがあります。報道では、広範なネットワークに対する複合的な摘発と位置づけられています。
市場への含意:法執行強化のシグナル
今回の申立は、デジタル資産を巡る大型の強制執行が常態化しつつあることを示します。とくに、不正取得資産の追跡と押収において、当局の手法が成熟している点が注目されます。一方で、没収資産の最終的な取り扱いは裁判所の判断に左右されます。
未解明点:取得経緯と管理ルート
ビットコインの取得経緯や、米政府の管理下に置かれるまでの具体的なルートには不明点が残ります。また、一部メディアは「国家準備」の文脈に言及していますが、政府の運用方針の詳細や長期的な扱いは確定情報ではありません。一次情報は公式資料と法廷手続きの更新を待つ必要があります。
用語解説
- 民事没収(Civil Forfeiture):犯罪に関連するとされる資産を裁判で国家に帰属させる手続き。
- 電信詐欺共謀:通信手段を用いた詐欺の共謀罪。米連邦法で規定。
- マネーロンダリング(資金洗浄):犯罪収益の出所を偽装する行為。共謀も処罰対象。
- ピッグ・ブッチャリング詐欺:SNS等で関係を築き、投資名目で資金を引き出す手口。
- 制裁指定:米財務省が特定個人・企業との取引を禁じる措置。資産凍結を含む。
日本:暗号資産のインサイダー取引を金商法で禁止へ
結論:未公開情報を使った売買を明確に違法化
金融庁は、暗号資産での未公開情報を用いた売買の禁止を金融商品取引法(金商法)に明記する方針です。違反には課徴金を科し、証券取引等監視委員会(SESC)の犯則調査や刑事告発にもつなげます。これまで自主規制中心だった監視を、法令に基づく枠組みに切り替える狙いがあります。
タイムライン:年末に制度設計、2026年に改正案提出へ
年末までに作業部会で詳細を詰め、2026年の通常国会で改正案の提出を目指します。施行までの間に、対象行為や運用指針の整理、交換業者の実務対応が進む見通しです。
監視と罰則:SESCが疑わしい取引を調査
改正後は、SESCが暗号資産市場での不自然な取引を把握し、犯則調査を実施できます。利益に応じた課徴金を勧告でき、悪質な場合は刑事事件化も視野に入ります。これにより、国内市場の公平性と信頼性の向上が期待されます。
対象情報の例:上場方針や重大なセキュリティリスク
規制対象となる未公開の重要情報には、取引所への上場方針やセキュリティ上の重大リスクなどが想定されています。価格に影響を与える情報を広くカバーし、不公平な先回り取引を抑止します。
論点:発行体不在や情報の定義の難しさ
一方で、暗号資産は明確な発行体が存在しないケースが多く、誰がインサイダーに当たるかの線引きが難題です。価格に影響する情報の定義や、グローバル市場での情報流通も整理が必要です。これらは作業部会での主要テーマになります。
市場への影響:投資商品としての魅力向上へ
国内の暗号資産口座は過去5年で4倍に増加したと報じられています。法的な監視体制が整えば、不正行為の抑止力が高まり、個人投資家にとっての安心感が増します。中長期的には、暗号資産を投資商品として扱う基盤が強化される見込みです。
用語解説
- 金商法:金融商品取引法。上場株のインサイダー規制などを定める基本法。
- 未公開の重要情報:一般に公表されておらず、価格に重要な影響を与え得る情報。
- 課徴金:違反で得た経済的利益を剥奪する行政上の金銭措置。
- 犯則調査:SESCが行う強制権限に基づく調査。刑事告発の前段階。
- 自主規制:業界団体(例:JVCEA)が定めるルール。法令に比べ強制力は限定的。
トラディFiの前進:カストディ計画、トークナイゼーション、欧州ETN参入
シティ:2026年にカストディ提供を開始へ
シティグループ(米銀大手)は2026年に暗号資産カストディを開始する計画です。まずは運用会社などの機関向けに提供します。自社技術と外部提携を組み合わせ、信頼性を重視した体制を整えます。
同社はすでにニューヨーク・ロンドン・香港の拠点間で、ブロックチェーンを使った24時間のドル送金を運用しています。規制の明確化が進む中で、保管と送金の両輪を押さえる狙いが見えます。
JPモルガン:取引は対応、保管は外部委託を検討
JPモルガンは、顧客向けの暗号資産の取引サービスを改めて示しました。一方で、カストディ(保管)は外部委託の検討を続けます。既存の金融インフラとブロックチェーンの併存戦略を掲げます。
今年はコインベース(米上場の大手取引所)との連携を発表し、顧客が銀行口座を直結できるようにしました。Base(コインベースのL2)上では、預金トークンJPMDのパイロットも進めています。
ブラックロック:自社トークナイゼーション技術を開発
ブラックロック(世界最大の運用会社)は、資産のトークン化技術を自社で開発中です。将来はETFや不動産など多様な資産をトークンとして提供する構想を示しました。仲介を減らし、手数料の低減を目指します。
同社はビットコインETFIBITとイーサリアムETFでトップ規模の残高を持ちます。さらに、BUIDL(トークン化マネー・ファンド)は数十億ドル規模に成長しています。大手によるオンチェーン化の流れが加速しています。
アムンディ:欧州でBTC ETNの発行を準備
欧州最大手の運用会社アムンディは、2026年初頭のビットコインETN発行を準備中と報じられました。ETNは欧州版の上場投資商品で、米国のETFに相当します。MiCAの施行で、欧州の制度面は整備が進んでいます。
巨大小売・機関マネーにリーチできるプレーヤーの参入は、流動性と価格発見の改善に直結します。欧州でも機関主導の資金フローが拡大する可能性があります。
全体像:大手の関与が広がる理由と影響
大手金融は、保管・送金・商品化の三領域で動きを強めています。背景には、規制の明確化、需要の定着、システム面の成熟があります。特に、カストディとトークン化は機関導入の前提条件です。
短期的には、サービス開始前の実装・監査・SLA(品質保証)が注視点です。中期的には、年金や保険などの長期資金が入るかが焦点です。欧州・米国の競争が、市場の標準化を進める可能性があります。
ポイントの整理
- シティ:2026年に機関向けカストディを開始予定。
- JPモルガン:取引は提供、保管は外部委託を検討。
- ブラックロック:資産のトークン化技術を自社開発。
- アムンディ:欧州でBTC ETN発行を準備、MiCA環境を追い風。
用語解説
- カストディ:暗号資産の保管・管理サービス。機関導入の要。
- トークナイゼーション:実物資産や金融資産をブロックチェーン上のトークンに置き換える手法。
- ETN:証券取引所に上場する債券型の投資商品。欧州では暗号資産連動が普及。
- MiCA:EUの暗号資産包括規制。発行体や取引所のルールを定める。
- Base:コインベースが開発したイーサリアムのレイヤー2。手数料と速度を改善。
- BUIDL:ブラックロックのトークン化マネー・ファンド。オンチェーンで運用。
ステーブルコインとインフラ:S&P×Chainlink、Stripeの信託銀行申請、Safe×Circle
S&P×Chainlink:安定性評価をオンチェーンで配信
S&Pグローバル(米大手の格付け・指数・データ企業)は、ステーブルコインの安定性評価(SSA)を提供します。配信はChainlink(分散型オラクルの代表的プロジェクト)の基盤を使います。
評価は1(非常に強い)〜5(弱い)の5段階です。信用格付けではなく、法定通貨のペッグ維持力などに焦点を当てます。まずはBase(Coinbaseが開発するL2)で展開し、対応ネットワークを広げる計画です。
これにより、DeFiや機関投資家は、スマートコントラクトに評価データを直接組み込めます。自動化されたリスク管理がしやすくなり、判断の一貫性と透明性が高まります。
Stripe(Bridge):連邦信託銀行免許を申請
Stripe(米決済大手)の子会社Bridge(同社のステーブルコイン事業)は、米通貨監督庁OCCにナショナル・トラスト銀行免許を申請しました。承認されれば、準備金の管理・カストディ・発行などを連邦の監督下で行えます。
背景には、米国で成立したステーブルコインの連邦枠組み(GENIUS法)の整備があります。目的は、安定通貨を既存の規制型の金融レールに統合することです。申請は審査中で、結論まで時間を要します。
Safe×Circle:USDC中心の自主管理を強化
Safe(エンタープライズで普及するマルチシグ型スマートアカウント)は、Circle(USDCの発行体。2025年にNYSE上場)と提携しました。機関向けの自主管理(セルフカストディ)でUSDCを中核に据え、ポリシー承認・ロール別権限・支出管理を標準化します。
チェーン間の資金移動には、CircleのCCTP(Cross-Chain Transfer Protocol)を使います。ラップ資産に頼らず、ネイティブUSDCを焼却・再発行して移すのが特徴です。これにより、コンプライアンスを意識したトレジャリー運用と、主要DeFiへのアクセスの両立を狙います。
全体像:安定通貨の「制度」と「配管」が同時に前進
評価の標準化(S&P×Chainlink)、発行と保全の監督枠組み(BridgeのOCC申請)、運用口座の業務標準化(Safe×Circle)が並行して進みます。いずれも、ステーブルコインを安全で扱いやすいインフラへ近づける取り組みです。
短期的な焦点は、実装品質・SLAと、規制審査の進捗です。中期的には、企業財務や資産運用のオンチェーン化がどこまで広がるかが論点になります。
用語解説
- S&Pグローバル:米大手の格付け・指数・金融データ企業。
- Chainlink:チェーン外データをオンチェーンへ届ける分散型オラクル。
- SSA:S&Pのステーブルコイン安定性評価(1〜5の指標)。
- Base:Coinbaseが開発するイーサリアムL2(レイヤー2)。
- Stripe:オンライン決済の世界的プロバイダー。
- Bridge:Stripe傘下のステーブルコイン事業子会社。
- OCC:米通貨監督庁。連邦レベルで銀行などを監督。
- ナショナル・トラスト銀行免許:連邦監督下でカストディ等を行う免許。
- GENIUS法:米国のステーブルコイン関連の連邦法枠組み。
- Safe:マルチシグ等で権限管理を行うスマートアカウント基盤。
- Circle:USDCの発行体(2025年にNYSE上場)。
- USDC:Circleが発行する米ドル連動型ステーブルコイン。
- CCTP:ネイティブUSDCを焼却・再発行でチェーン間移動する公式プロトコル。
- 自主管理(セルフカストディ):資産を自社で直接管理・運用する方式。
- SLA:サービス品質保証。稼働率やサポート水準の取り決め。
イーサリアム:FusakaがSepolia稼働、ブータンは国家IDをETHへ統合
FusakaがSepoliaで第2段階に到達
イーサリアムの次期大型アップグレード「Fusaka」が、Sepoliaで稼働しました。狙いは処理能力の拡大と安定運用の検証です。ブロック当たりのガス上限を60Mまで引き上げ、ノードの負荷やネットワークの安定性を確認します。
新機能の核はPeerDAS(データ可用性のサンプリング)です。検証者がデータの一部だけを分散取得し、全量を保存せずに可用性を確認します。これにより、スループット向上と分散性の両立を目指します。
ロードマップは三段階です。10月1日にHoleskyで開始し、今月は最終のHoodiに展開予定です。12月のメインネット実装を視野に、実運用レベルの耐性を詰めます。
ブータン、国家デジタルIDをイーサリアムに統合【続報】
昨日もお伝えしましたが、ブータン政府は国家デジタルID(NDI)をイーサリアムへ統合します。国民規模のIDを公開ブロックチェーンに接続する、世界初の事例とされます。認証情報は検証可能な資格情報として発行されます。
市民は中央データベースに依存せず、年齢や居住地などを証明できます。移行の完了目標は2026年第1四半期です。W3C標準を用いた設計で、相互運用性の確保も意識します。
一方で、公開チェーン利用にはプライバシーの論点が残ります。透明性と個人情報保護のバランスが焦点です。実装段階での設計と運用の精度が問われます。
用語解説
- Fusaka:イーサリアムの次期拡張。処理能力とデータ処理を強化。
- Sepolia:イーサリアムのパブリックテストネットの一つ。
- ガス上限(60M):ブロックに含められる計算量の上限。
- PeerDAS:データ可用性を部分サンプリングで検証する仕組み。
- NDI:国家デジタルID。行政手続きなどで使う本人確認基盤。
- 検証可能な資格情報:第三者が真正性を確認できるデジタル証明。
- 公開ブロックチェーン:誰でも参加できる開放型チェーン。
- Holesky/Hoodi:Fusaka検証のための他のテストネット段階。
デリバティブの裾野拡大:CMEでXRP/SOLのオプション開始
何が起きたか
米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が、XRPとSOLのオプション取引を開始しました。規制当局であるCFTCの管理下にある商品です。これにより、BTCやETH以外でも、規制環境でのアルトコインエクスポージャーが取れます。
新商品は対応する先物契約での実物決済となります。標準サイズとマイクロサイズが用意され、月次と週次の満期を選べます。取引は平日に提供され、既存の暗号資産デリバティブ群を補完します。
投資家にとっての意味
- 選択肢の拡大:規制市場でXRP/SOLの価格変動に備えたヘッジが可能になります。
- 市場の成熟:BTC/ETH中心から、アルトコインへも機関向け商品が広がります。
- ワークフローの整合:先物とオプションを同一所で組み合わせ、リスク管理を一元化できます。
注意点と初期の論点
開始直後は流動性が薄い場面に注意が必要です。スプレッド拡大や約定の不安定化が起きやすくなります。また、現物と先物の価格差(ベーシス)が変動すると、ヘッジの効果がぶれる可能性があります。
現物の受け渡しやポジションの移管を行う場合は、EFRP(関連取引との交換)の仕組みを理解しておくことが重要です。私設の相対で条件を合意し、先物と現物を同時に入れ替えます。運用フローやコンプライアンス面の整備が前提になります。
用語解説
- CME:米国の大手先物・オプション取引所。金利や商品、暗号資産のデリバティブを上場。
- CFTC:米商品先物取引委員会。先物やオプション市場を監督する連邦機関。
- オプション:将来の売買を「権利」として取引する金融商品。プレミアムを支払います。
- 実物決済:オプション満期時に対応する先物契約の受け渡しで決済する方式。
- マイクロ契約:標準より小さな取引単位。少額からのポジション構築に適します。
- ベーシス:現物価格と先物価格の差。ヘッジ効果に影響します。
- EFRP:現物と先物を同時交換する手続き。私設で条件合意後、取引所に報告します。
- アルトコイン:BTC以外の暗号資産の総称。今回はXRPとSOLを指します。
今後の注目:英GDP・米小売・ユーロ圏HICP、中国GDP、日本/米CPI
今週から来週にかけて主要指標が集中します。為替や金利が動きやすく、暗号資産も連動しやすい地合いです。特にドルの方向性と米金利の見通しが短期のセンチメントを左右します。発表時間は原則日本時間(JST)です。
直近スケジュール(JST)
提出カレンダーに基づく主要イベントです。時刻のずれにご注意ください。
- 10/16(木) 15:00 英国・8月月次GDP
- 10/16(木) 21:30 米・9月小売売上高(総合/除自動車)
- 10/17(金) 18:00 ユーロ圏・9月HICP(改定値/コア)
- 10/20(月) 11:00 中国・7–9月期GDP(前期比/前年比)
- 10/24(金) 08:30 日本・9月CPI(総合/除生鮮/除生鮮エネルギー)
- 10/24(金) 21:30 米・9月CPI(総合/コア)
パウエル議長の講演要旨(10/14)と市場連関
政策は「データとリスク評価」で決定と明言しました。雇用は弱含みですが、経済は想定より幾分堅調との判断です。さらに、関税が物価を押し上げるリスクにも触れました。
追加利下げは「会合ごとに判断」とし、あらかじめ決めた経路は取りません。加えて、「今後数カ月以内に」QT停止に近づく可能性を示唆しました。これらはドルと金利の方向感を定めにくい要因となり、暗号資産はマクロ見出しに敏感な状態が続きます。直近では米小売と米CPIが価格変動の焦点です。
米政府機関の一部閉鎖とデータ遅延リスク
米国では政府機関の一部が閉鎖中です。議長は、閉鎖が続くと10月分統計の公表遅延が起こり得ると指摘しました。指標の遅延は不確実性を高めるため、為替や株式を通じて暗号資産のボラティリティが再拡大しやすくなります。カレンダーの更新と公表可否の確認が必要です。
暗号資産への波及ポイント
- 米指標→ドル・金利:米小売と米CPI次第で、ドル高・金利高が再燃する可能性。
- 欧州・英国:HICPやGDPはリスク資産全体のトーンを左右。
- 中国GDP:コモディティとアジア株のトーンを通じて間接的に波及。
用語解説
- HICP:ユーロ圏の消費者物価指数。物価の基調を示す。
- 小売売上高:個人消費の勢いを測る米国の主要指標。
- QT(量的引き締め):FRBが保有資産を縮小する運営手法。
- 会合ごとに判断:定例会合ごとに利下げ等を都度決める方針。
- 政府機関の一部閉鎖:つなぎ予算未成立に伴う一時的な行政停止。
結論・要点整理
14日のビットコインは終値が$113,030でした。日中は$115,401→$109,948の広いレンジを往来しました。清算ショックの余波に、資金フローと規制・インフラのニュースが重なりました。通商ヘッドラインへの感度も高いままです。
本日の要点
- フロー悪化:米スポットETH ETFは10/13に約4.29億ドル流出。守り姿勢が強まりました。
- 取引所対応:Binanceが最大4億ドルの追加支援を発表。信認回復を狙います。
- 法執行強化:米司法省が127,271BTC(約140億ドル)の没収を申立。最大規模と報じられました。
- 地合い:マクロ指標の集中と通商リスクにより、ボラティリティは再拡大しやすい状況です。
短期の注目ポイント
- 主要指標:英GDP、米小売、ユーロ圏HICP。来週は中国GDP、日本・米CPI。
- 連鎖経路:指標→ドル・金利・株式→暗号資産の順で影響が出やすいです。
- データ遅延リスク:米政府機関の一部閉鎖で、統計公表が遅れる可能性があります。
注記:本記事にはAIによる収集・分析データが一部含まれます。情報の正確性には十分留意していますが、最終的な判断はご自身の責任でお願いします。
免責:本記事は投資判断を促すものではなく、市場理解を目的とした情報提供にとどまります。
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